「80歳になっても20本の歯を残すことができたら、最後の瞬間まで人生を楽しめることができる」
口腔の健康は全身の健康と深く関連しており、年齢を重ねても自分の歯を維持するためには、整った歯並びと正しい噛み合わせが非常に重要です。本記事では口内環境と健康寿命の関係性をご紹介します。
8020(ハチマルニイマル)運動とは、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。歯が20本あれば、食事をしっかり噛んで食べることができるという観点から、この運動が始まりました。
8020達成率は、1989年7%程度(平均残存歯数4~5本)でしたが、2007年には、それを上回る25%を達成。2017年には達成者が51.2%となりました。
年々、口内環境への意識が高まってきています。
日本の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳。
世界トップクラスの長寿国家ですが、
介護を必要としない「健康寿命」は男性71.19歳、女性74.21歳。つまり亡くなるまでの約10年は介護が必要になる確率が高くなると言えます。
8020運動でも、達成した人の口内調査の結果、歯並びや噛み合わせに問題がある人がいないという共通点が判明しました。
口内環境さえよくすれば健康寿命をのばし、最後の瞬間まで人生を楽しめる確率を上げることができます。
歯があることで噛むことができるので、噛めば噛むほど唾液が分泌します。唾液の分泌が少なくなると、口内で虫歯菌や歯周病菌が増殖。それが血管を通って全身に広がり、以下のような病気を引き起こすと言われています。
血管に入った口内細菌の老廃物がこぶ状に固まり、血栓を作って、血管が詰まり血流が止まります。
細菌の老廃物が血管に侵入。壁に溜まって硬くなり破れやすくします。
「歯周病菌が発がんリスクを高める」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンのドミニクミショー博士が発表しました。
むせた拍子に歯周病菌が肺に入り、肺炎を引き起こします。睡眠中などに肺が冒される不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)だと、肺に入ったことにすら気づかず、症状が進みます。
心臓の弁に歯周病菌が付着し、心不全を起こします。
インフルエンザウイルスをサポートする細菌は口腔内に潜伏しています。
口腔内の細菌と反応して、インフルエンザウイルスが力を増すのです。
プラークによって血管内が狭くなり、血液を全身に送る圧が高くなった結果、高血圧になります。
糖尿病によって弱くなった血管に歯周病菌が入って炎症を起こし、さらに症状を悪化させます。
血管内に入った歯周病菌が卵巣、子宮で炎症を起こすと妊娠が困難になり、流産のリスクも高まります。
歯周病菌による子宮の炎症が妊娠時に起こると、子宮が収縮し、早産や低体重児の原因になります。
アルツハイマー型認知症は、脳に付着した歯周病菌が悪影響を及ぼすことがわかりました。脳出血型認知症は、脳梗塞、脳出血が原因で、プラークによる影響が考えられます。
細菌が起こす激しい炎症から多臓器不全を招きます。
40代以降の日本人8割が歯周病にかかっていると言われる現代。
歯周病の恐ろしさを一人一人が認識することが大切です。
歯列矯正を審美的な理由だけではなく、予防歯科、予防医学として、歯並びや噛み合わせが良くなり、咀嚼による唾液分泌が増え、口内環境が良くなることが大病を防ぐことに繋がる意識を持つことはとても大切です。
人から見えにくい矯正であるインビザラインは年齢を気にせず、何歳からでも始められます。気になる方は、一度クリニックで受診されることをお勧めいたします。
引用・参考文献;「脳卒中で死にたくなければアゴを押しなさい」森 昭・森 光恵 著
監修者 森 昭
竹屋町森歯科クリニック(京都府舞鶴市)
舞鶴市にて、総世帯数の25%がクライアントという人気歯科医。予防歯科・予防医学を重点的に捉え、唾液やオーラルケアの大切さを全国に発信している。『歯はみがいてはいけない』(講談社+α新書)『体の不調は「唾液」を増やして解消する』(PHP研究所)など著書多数。
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